「設備屋」と「水道屋」の違いは?混同されがちな職種を明確に解説

建設やリフォームの現場でよく耳にする「設備屋」と「水道屋」。どちらも生活インフラに関わる職種ですが、実際に何が違うのか、はっきり説明できる人は少ないかもしれません。求人情報や現場での会話でも、使い分けが曖昧になっていることが多く、「呼び方が違うだけ?」と感じた人もいるのではないでしょうか。


実際、両者には重なる部分もあります。ただ、専門とする分野や仕事の範囲、日常業務の中身を見ていくと、それぞれに特徴があります。特に、これから業界に入ろうとしている方や、転職を考えている方にとっては、その違いをきちんと理解しておくことが重要です。


なぜなら、自分が携わる仕事の内容や働き方、将来のキャリアパスにも影響が出てくるからです。このあと、「水道屋とは何をする人か」「設備屋の守備範囲はどこまでか」を、それぞれ丁寧に整理していきます。違いを知ることで、自分に合った仕事の選び方も少しずつ見えてくるはずです。




水漏れ修理や配管工事…“水回りのプロ”が水道屋

水道屋は、その名のとおり「水」に関わる工事を専門とする職種です。一般家庭の蛇口やトイレ、浴室の水回り設備に加え、住宅や建物全体の給水・排水配管の工事も担当します。とくに目立つのは、漏水修理や水圧の不調、詰まりといった“トラブル対応”の仕事。いわば、水回りの緊急対応のプロフェッショナルと言える存在です。


また、トイレやキッチンのリフォーム時に新しい配管を引いたり、古くなったパッキンやバルブの交換などを行うのも水道屋の典型的な仕事です。一般の家庭だけでなく、小規模な店舗や事業所の水回りメンテナンスを請け負うことも多く、「街の水道屋さん」として地域密着で活動するケースもあります。


使用する工具や材料も比較的シンプルで、取り扱うのは主に水道管・接続部品・止水栓など。作業の範囲は比較的限られており、一つひとつの現場を短期間でこなしていくスタイルが多いのが特徴です。トラブル発生時に呼ばれることが多いため、スピード感と対応力が求められます。


なお、水道屋という呼び方は業界内でも慣用的に使われることが多く、実際の職種名は「配管工」や「給排水設備工」として求人に出ていることもあります。自治体からの指定を受けている「指定給水装置工事事業者」として営業している業者もあり、一定の信頼性が担保された存在です。




水だけじゃない。空調・換気・防災設備まで含むのが設備屋

設備屋は、水道屋と比べて仕事の幅が大きく広がります。たしかに給排水設備も含まれますが、それだけではなく、空調(エアコン)、換気扇、ガス管、ボイラー、消火設備、時には電気配線や床暖房の設置なども担当する場合があります。つまり、水に限らず、「建物内の生活機能すべてを支えるインフラ整備」が主な役割です。


たとえば新築の現場では、建物の設計段階から関わり、設備の配置を図面上で確認しながら配管ルートを決めていきます。そのうえで、配管・機器設置・保温・試運転といった工程を経て、設備全体が問題なく稼働するかどうかまでを確認します。水道屋が“部分対応”であるのに対して、設備屋は“全体構成”に携わるイメージです。


設備屋の業務範囲は建物の規模によっても異なります。戸建て住宅では水回りと空調が中心になりますが、ビルや商業施設、工場では複雑な配管・機械設備が多数あり、設計とのすり合わせや他業種との工程調整が不可欠です。現場での総合的な判断力や、職人間の連携力も大切になってきます。


こうした背景もあり、設備屋には国家資格を持つ人材も多く在籍しています。たとえば、「管工事施工管理技士」や「給水装置工事主任技術者」などは、現場の安全と品質を保つために重要な資格です。より広く・複雑な設備に関わる分、高い技術力と経験が求められるのが、設備屋という職種の特徴だと言えるでしょう。




呼び方があいまい?業界内でも“水道屋=設備屋”なケースも

実際の現場では、「水道屋」と「設備屋」の違いがあいまいなまま使われていることがよくあります。とくに小規模な工事会社や地域密着の業者では、ひとりの職人が水道・空調・換気など複数の設備を兼任しているケースも多く、「どちらとも言える」という実情があるのです。


これは、仕事の内容そのものよりも、会社の呼び方や慣習に影響されている部分が大きいです。たとえば、昔ながらの業者では「水道屋」を名乗っていても、実際には空調機器の取り付けや配管工事も行っている場合があります。一方で、工事範囲を広く見せるために「設備屋」を名乗っている企業もあります。


また、発注者側(施主や元請け)から見たとき、「配管をやる業者=水道屋」と一括りにされることもあります。実際には、設備屋が建物全体の図面を見ながら配管ルートを計画し、水道屋が部分的な修理を担う、といった分業がされている現場もあります。


このように、業務内容が重なりやすく、会社の体制によっても線引きが曖昧になるため、「設備屋と水道屋は別もの」とは一概に言えないのが実態です。大切なのは、名称に惑わされることなく、「何の工事を扱っているか」「どの範囲まで施工できるか」を見極めること。職人を目指す側としても、会社の得意分野や、担当できる業務の幅に注目すべきです。




「やりたいこと」と「扱う分野の広さ」で選ぶ

就職・転職先として「設備屋」と「水道屋」のどちらを選ぶかを考えるとき、自分がどういう現場に関わりたいのか、何を専門にしていきたいのかを明確にすることが大切です。それぞれに特徴があるので、「どちらが上か」ではなく、「自分に合うかどうか」が判断の軸になります。


たとえば、「トラブル対応が得意」「人と接するのが好き」という人なら、水道屋の仕事が向いているかもしれません。現場ごとに素早い判断と手際が求められ、対応力や会話力が活きる仕事です。一方、「図面を見て全体を構想するのが好き」「より大きな建物に関わりたい」という人なら、設備屋として複雑な設備を扱うほうがやりがいを感じられる可能性があります。


また、将来性の面でも違いがあります。水道屋は地域密着型の仕事が中心になる一方で、設備屋は公共工事や大型施設の設備更新などに関わる機会も多く、キャリアの広がりが見込みやすい傾向があります。資格の取得や施工管理へのステップアップを目指すなら、設備屋のほうが幅があると言えるでしょう。


自分の特性や興味と照らし合わせながら、仕事のスタイルや成長イメージを想像してみてください。どちらを選んでも、社会にとって欠かせない仕事であることは間違いありません。

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「設備屋」と「水道屋」どちらを選んでも“暮らしを支える誇りある仕事”

「水回りの専門家」である水道屋と、「建物全体の設備を担う」設備屋。たしかに仕事内容や関わる分野には違いがありますが、どちらも人々の暮らしや仕事の場を支えるという共通点があります。名前や範囲は異なっても、“誰かの困りごとを技術で解決する”という本質は変わりません。


重要なのは、その違いを理解したうえで、自分がどんな仕事をしていきたいかを考えること。目先の条件だけでなく、どんな現場で働き、どんな経験を積んでいきたいのか。迷ったときは、実際の作業内容や職場の雰囲気を直接見ることも参考になります。


そして、自分に合った道を選んだあとも、現場で一つずつ経験を積み重ねていくことが、この仕事では何よりの財産になります。焦らず、確実に、技術を自分のものにしていってください。

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