皆さんこんにちは。山梨県富士吉田市を拠点に、給排水衛生設備や空調設備工事を手掛ける柏和設備株式会社です。
設備業界の求人や現場用語を見ているときに、「スリーブ工事って具体的に何をするんだろう?」「配管の仕事なのに、なぜコンクリートの壁に筒を入れるの?」など、疑問や不安を抱えている人もいるでしょう。
実は、スリーブ工事は建物の強度を守りながら、水や空気を確実に届けるための「設備の通り道」を作る、新築現場において一番最初に行う非常に重要なステップです。
この記事では、スリーブ工事の役割やインサート工事との違い、具体的な施工手順から注意点までを分かりやすく解説します。
設備屋としてスキルアップを目指したい方や転職希望者はもちろん、現場の専門知識を知りたい未経験者にもわかりやすく解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
■スリーブ工事の役割と種類

建物を新築する際、コンクリートの壁や床にはあらかじめ筒状の材料を埋め込んでおきます。この筒をスリーブと呼び、水道管や電気の線をスムーズに通すために欠かせないものです。建設現場における役割を見ていきます。
・設備の通り道を確保する理由
コンクリートが固まった後に配管用の穴を開けようとすると、建物の骨組みである鉄筋を切断してしまい、構造の耐久性が落ちる危険があります。
そのため、コンクリートを打設(枠に流し込む作業)する前にスリーブを設置し、設備の通り道を確保する必要があります。躯体(建物の本体部分)を傷つけず、将来のメンテナンスや配管工事を安全に行うための重要な準備です。
・エアコン用貫通スリーブ
空調設備で身近なのが、エアコンの配管を通す貫通スリーブです。室内の機器と屋外の室外機をつなぐ線を束ねて通すため、壁に筒を入れます。
この筒には、壁の内部に湿気や雨水が入り込むのを防ぎ、建物を保護する機能があります。事前に適切な位置や材質を選定し固定しておくことで、水漏れなどのトラブルを防ぐことができます。
・インサート工事との違い
現場の用語として混同されやすいのがインサート工事です。スリーブが配管を通す「トンネル」の役割であるのに対し、インサートは天井から配管や水道管を吊り下げるための「受け金具」をコンクリートに固定する作業を指します。
どちらも型枠(コンクリートを流し込む枠)への事前作業ですが目的が異なります。設計図面から正しい位置を把握する技術が求められます。
■スリーブ工事の手順と方法

現場での作業は、建物の基礎となる型枠や鉄筋が組まれるタイミングに合わせて進みます。他の建築職人と連携しながら、正確に設備の通り道を作るための具体的な施工手順を見ていきましょう。
・図面に基づく墨出しの方法
最初の準備が墨出し(すみだし)と呼ばれる作業です。これは、設計図面を読み取り、型枠の板や床に「ここにスリーブを設置する」という目印を実寸大で書き写す作業です。
定規や専用の道具を使い、ミリ単位で正確な位置を出します。もしこの位置がずれると、後で水道管をつなげなくなるため、設備工事のなかでも非常に重要性の高い工程です。
・壁や床へのスリーブ入れ
墨出しで決めた目印に合わせて、筒状の材料を配置していく作業が「スリーブ入れ」です。壁を貫通させる場合は型枠の間に筒を挟み込み、スラブ(コンクリートの床)に埋め込む場合は、組まれた配筋(鉄筋)の隙間を縫うように筒を立てます。
排水や空調など、通す配管の種類によって筒の形状や材質も変わるため、条件に応じた選定が必要です。
・コンクリート打設前の固定
配置したスリーブは、重いコンクリートを流し込む圧力でズレたり潰れたりしないよう、周囲の鉄筋や型枠にしっかりと固定します。番線(太い針金)などを使って縛り付け、必要に応じて筒の周りに補強を加えます。
この固定作業が甘いと、筒の中にコンクリートが流れ込んで使い物にならなくなる問題が発生するため、確実な技術が求められます。
■施工時の注意点と基準

建物の強度や設備の機能を維持するため、スリーブ工事には厳格なルールが設けられています。計画段階から周囲の構造を考慮し、トラブルを防ぐための重要な基準と注意点を解説します。
・スリーブの間隔や離隔距離
複数の配管を並べて通す場合、筒と筒の間隔(離隔距離)を十分に確保する必要があります。間隔が狭すぎると、間にコンクリートがうまく流れ込まず、ひび割れや強度が落ちる原因になります。
たとえば、太いストローを何本も隙間なく束ねると間に水が入らないように、筒同士が近すぎると建物の骨組みに空洞ができてしまいます。そのため、事前の計画で適切な配置を決めることが重要です。
・梁の強度を守るかぶり厚さ
梁(はり)や地中梁など、建物の重さを支える太いコンクリート部分にスリーブを入れる際は、「かぶり厚さ」に注意します。かぶり厚さとは、骨組みである鉄筋から表面のコンクリートまでの厚みのことです。
これが不足すると、鉄筋が雨水や湿気で錆びやすくなり建物の耐久性が低下します。穴を開けることで強度が落ちる部分には、補強用の鉄筋を周囲に追加して、構造の安全を守る作業が求められます。
・後付けが難しい理由と気密
コンクリートが固まった後にスリーブを後付けするのは、騒音やホコリが出るだけでなく、壁の中の鉄筋を切ってしまうリスクがあるため非常に困難です。
また、エアコンなどの貫通部分では、筒と配管の隙間をパテなどでしっかり埋めて気密(空気が漏れない状態)を保つ処理が欠かせません。この作業を怠ると、外の湿気が室内に侵入する問題が起きるため、最初の施工での確実な準備が大切です。
■スリーブ工事の単価と費用

スリーブ工事にかかる費用は、使用する筒の材質や太さ、そして作業にかかる人件費(現場では職人1人あたりの1日の労働力を「人工(にんく)」と呼びます)によって決まります。
水を通す配管や電気設備など、用途に応じた塩ビ管や専用管の材料費に加え、図面から位置を割り出す墨出し、そして鉄筋への固定までの作業費が単価として計算され、建物の規模によって全体の金額が変動します。
設備工事の予算全体から見れば小さな工程に見えるかもしれませんが、建築の構造を守り、将来のメンテナンス性を左右する重要な基礎となるため、正確な計画と施工が求められます。
■まとめ
今回は、コンクリートの建物に配管の通り道を作る「スリーブ工事」の役割や手順について解説しました。
完成後は壁や床の中に隠れて見えなくなる部分ですが、この確実な事前準備があるからこそ、建物に安全な水や空気を届けることができます。
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